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塩麦茶で熱中症対策! スポーツドリンクは効果なし? 脱水レベルに適した水分補給とは

身体のメカニズムと飲料の特性が分かれば、それを上手に活用した熱中症対策ができます。しかし、これを知らずに、

  • とりあえず水を飲む
  • とりあえずスポーツドリンクを飲む
  • とりあえず経口補水液を飲む

な〜んて思っていると、場合によっては体に危険なこともありうるのです!

熱中症レベル(脱水症状の段階)に合わせて、何を飲むか? どのように飲むか?

猛暑の夏は、正しい知識のもとに水分補給をして熱中症にならないよう気をつけましょう。

(1)「ミネラル」を知る

厚生労働省により、1日の最低摂取量まで定められている『ミネラル』!
確かに五大栄養素の一つでもあり、大事なことは分かります。でも、本音を言うと、何故そんなに大事なのかがよく分からない…とおっしゃる方は少なくないでしょう。恐らく、それが熱中症を招く大きな要因の一つになっているものと思われます。

そこで今回は、私たちの身体の体温調整メカニズムとミネラルの関係を知って、よりよい熱中症予防ができる水分補給方法を考えていきたいと思います。

人は恒温動物

私たち人間の体温調整に大きく関わるミネラル。特に夏場は、そのバランスが崩れると、たちまち命の危険にさらされる事も少なくありません。

とは言え、先日の記事、なぜ牛乳が最強の熱中症予防なのか? 暑熱順化で脱水症状を防ぐ方法で、体温調整のメカニズムについて分かったように、私たち人間は、生まれながらにして熱を作り出す能力「産熱」と、熱を放出する能力「放熱」を兼ね備えています。

つまり、身体を温めたり冷やしたりすることが自由自在にできるため、外気温によって体温が大きく変動する動物ではないのです。その証拠に、真冬の北海道に行っても、真夏の沖縄に行っても、平熱が36度の人なら、その前後をキープできるはず! このように、生まれながらにして自力で体温を一定に保てる力を持った動物を「恒温動物(こうおんどうぶつ)」と呼びます。

なんと、人は外気温の差が30度くらいまでなら十分対応できるとの事、すごいですね。昼は猛暑、夜は氷点下になるような砂漠でも暮らしていけるのは、そのお陰にほかならないと言えるでしょう。

ところが、気温30度前後の場所に長時間いると、この体温調節機能がうまく作動せず、吐き気やめまい、手足のしびれなどを発症する事があります。そして、そのまま状況が悪化すると、意識障害を起こし、失神から死に至る事もある訳で、これこそが熱中症です。

熱中症の原因は体外ではなく体内にあり!

熱中症と言えば暑い日に起きるものという事で、外的環境が大きく関わると思われがちです。もちろんそれはその通りなのですが、ならば、その要因は体外にあるのかと言えば、これが大間違い! 実は熱中症の多くは、体外環境ではなく、体内環境が引き起こしているのです。

私たち人間は2つの温度センサーを完備し、365日24時間、体内外の温度を感知しています。ちなみに、体内の温度変化を感知するのが深部にあるセンサーのお仕事。もし、怒りマックスになって体温が急上昇した場合には、汗がだらだらと流れ、放熱すると同時に、その汗が冷やされることで冷却もできる仕組みになっています。

一方、外気温や湿度を感知しているのが身体表面のセンサーですが、いずれの情報も、その場ですぐに処理される訳ではありません。いったん脳の中の司令室に集積され、そこから末梢神経や筋肉といった関係部署に産熱や放熱の指令が出されます。そして、その指令を伝えるのが自律神経です。ですから、脳からの放熱指示を伝える自律神経が正常に働けない状態にあれば危険です。となると、うつ病などの精神疾患を患っている人はもちろん、過度の疲労やストレスを抱えている人も熱中症のリスクは高いといえるでしょう。

また、身体表面の温度センサーは加齢と共に鈍くなるため、高齢になると、気温が30度を超えても暑さを感じなくなってしまう事があります。すると、自己放熱が行われず、どんどん体温は上がり、猛暑の犠牲となるお年寄りが後を絶たないという訳です。

しかし、最も危険なのは、自律神経も温度センサーも異常なしだというのに、放熱がうまく出来ないパターンです。そして、その原因はと調べてみると、なんと、自律神経を動かしたり、筋肉運動を司る電気系統の不良! そこで、即座に修理しなければならず、その方法の一つがミネラル補給なのです。

そもそも『ミネラル』ってなんだろう?

ミネラル』は、「タンパク質」・「脂質」・「炭水化物」・「ビタミン」と並ぶ五大栄養素の一つで、人にはなくてはならない物質。全身の約4%を占めています。

たった4%かと思われるかも知れませんが、人は元々、炭素・水素・窒素・酸素という4つの気体ベースで、60%までが水分、液体です。そのため、原子分解すると、炭素のC、水素のH、窒素のN、そして、酸素のOだけで96%にまで達してしまいます。そこにミネラルが加わって、ようやく固体化されているといえるのです。

このためミネラルは、人間の生命維持にはなくてはならない『生体元素と呼ばれています。地球上には約100種類の元素物質が存在すると言われていて、先の4種類の気体(炭素・水素・窒素・酸素)を除く90種類以上の元素がミネラルとして、私たちの身体の細胞を構成したり、代謝や運動など、ありとあらゆる場面で中心的な働きをしているのです。

例えば、リンやカルシウムを使って骨や歯を作ったり、鉄を使って全身に酸素供給したり、カリウムを使って筋肉を伸縮させたり、亜鉛を使って免疫力を高めたり・・・と、何しろ90種類以上もあるのですから、その活用シーンと方法は様々です。そして、相互作用も巧みに利用しています。

さらに、このミネラルをベースとして構成されるのが『イオンバランス』と呼ばれる動力システムで、ここに支障を来すと体温調整が上手に出来なくなるのです。そうして熱中症を引き起こす事になる訳ですが、このイオンバランスの調整は腎臓が担っています。そのため、腎臓が弱っていてもまた、熱中症のリスクは間違いなく高まります。という事で、次はイオンバランスについてお勉強してみましょう。

(2)「イオン」を知る

近頃よく耳にする『イオン』!
でも、その正体が何者なのか? なぜ体にいいのか、どうして必要なのかが今ひとつ分からないという方は少なくないでしょう。しかし、本当は毎日の食事と直結した実に身近な存在なのです。しかも、熱中症対策を考える上では、非常に重要な鍵を握っているとなると、知らないで済ませる訳にはいきません。そこで、軽くお勉強してみたいと思います。

人の動力源は噂の「イオン」なのだ!!

私たち人間の体は、約60%までが水分です。その水中に、水に溶けると電気を帯びる性質を持つ物質を混ぜ、そこに電流を通すような形で細胞が生きるための環境作りをしたり、様々な生命活動を可能にしています。ただし、身体は東京電力や関西電力と契約している訳ではないため、発電所から電気回路を作って電力供給してくれるところがありません。そこで、自分で電気回路を作り、電気も作って流すという完全自給自足の世界です。

そのため、発電したり電気を通すのが大好きな性質を持つ金属類を主とした鉱物を摂取し、そこから電気と回路を作るのが人の基本構造。この電気と回路の材料となる物質は全て「生体元素」、『ミネラル』に含まれます。必須ミネラルと言われる16種類は鉄や銅、亜鉛など、金属鉱物が中心で、特に重要視される主要ミネラルは、カルシウム・リン・ナトリウム・カリウム・マグネシウム・硫黄と、7種類のうち6種類までが金属類だという訳です。

これら金属ミネラルを巧みに操ることで微弱な電気を精製し、動力源を確保している訳ですが、作った電気を全身に流すには、電線を張り巡らさなければなりません。これはかなり大変な作業です。そこで考え出されたのが、電気を通す性質を持つ物質を体液中に溶かし、精製した電気を運搬させる方法です。実は、この電気の運搬役を担う物質こそが噂の『イオン』なのです。イオンは水に溶けると電気を帯びる「電解物質」という事になります。

中でも主な電解物質となるのが「ナトリウム」・「カリウム」・「カルシウム」・「マグネシウム」・「クロール」の5つ。これらが水に溶けると、ナトリウムは「ナトリウムイオン」、カリウムは「カリウムイオン」マグネシウムは「マグネシウムイオン」という形で電解質に変身し、人体の動力源となります。そして、熱中症を予防する体温調節にも大きく関わって行くのです。

イオンバランスを保つ事こそが健康を保つ事

私たち人間は、遙かいにしえの時代から、21世紀の文明ともいえる自家発電によるオール電化システムで生きて来たのですからスゴいものです。
ただし、そのためになくてはならない栄養素、それが「ミネラル」で、90種類以上もあるミネラルを適材適所で使い、時に相互作用を活用したりもしています。そのため、このミネラルのバランスが崩れると、たちまちトラブルを引き起こす事は珍しくありません。また、大事には至らなくても、体調不良に陥る事は多く、「ミネラル欠乏症」という疾患まで存在するくらいです。

ところが、人体には鉱山や地底のような鉱物の採掘場所がないため、自力でミネラルを確保する事ができません。となると、日々の飲食で取り込むしかないのです。しかも、どれか一つ二つ補充しておけばいいというものではなく、厚生労働省が推奨するように、少なくとも、必須ミネラルと呼ばれる16種類のミネラルは、毎日きちんと取り込む事が重要になります。さらに、常に様子をうかがい、特定のミネラルの不足を感じたら早期に補充することも大事で、必要に応じたミネラル補給こそが熱中症対策のポイントなのです。

なにしろミネラルは、私たち人間の動力源となるイオンを作る物質。しかも、人間のような複雑な原動を実現するためには、複数のイオンを巧みに組み合わせ、バランス良く全身に流す必要があります。そこで、この『イオンバランス』をキープする事こそが健康維持なのです。

事実、先の5つのイオンは神経の伝達や筋肉の収縮、体内の水分調整や酵素活性、止血、さらにはホルモンの分泌や細胞増殖まで、日々の活動になくてはならない運動に加え、体調を整えたり、病気や怪我を治癒させるために必要な原動力にもなります。そのため、イオンバランスが崩れると、むくみや冷え、そして、めまいや吐き気、倦怠感、食欲不振と言った様々な不調を感じるようになるでしょう。

「イオンバランス」とは?

イオンバランスと言うと、まれに「+イオン(プラスイオン)」と「−イオン(マイナスイオン)」のバランスの事だとおっしゃる方がおられますが、残念ながら、そんな単純な話ではなさそうです。確かにミネラルは水に溶けて分解されると、必ず+イオンか−イオンのどちらか一方になる定めを持っていて、ナトリウムやカリウム・カルシウムなどは+イオンになります。一方、クロールは−イオンになるため、「塩化ナトリウム」こと食塩を水に溶かすと、+イオンのナトリウムイオンと−イオンのクロールイオンという2つの主要なイオンを精製できるわけです。そして、+イオンはプラスの電気を持つ「陽イオン」で、−イオンはマイナスの電気を持つ「陰イオン」です。当然、電気を上手にやり取りする上では、どちらも必要で、バランスも重要になる事は間違いありません。

ただ、細胞の内側においては、プラスのカリウムイオンが出す電気をタンパク質が−イオンとなって受け止めている部分が往々にしてあり、必ずしもミネラルだけに頼り切っている訳ではないのです。そこで、例え+イオンばかりでも、必要なものは必要という事で、必須ミネラルが選抜されていると言えるでしょう。事実、先にご紹介した5つのイオンのうち、−イオンはクロールだけで、残りの4つは全て+イオンです。しかも、主要ミネラルに指定されている7つの栄養素から精製されます。

主なイオンの役割

先の5つのイオンの主な役割は次の通りです。

ナトリウムイオン
水分量の調節・浸透圧の調節・神経の伝達・筋肉の収縮運動など
カリウムイオン
神経の伝達・筋肉の収縮運動・心臓の収縮運動など
マグネシウムイオン
筋肉の収縮運動・骨や歯の形成・酵素活性など
カルシウムイオン
神経の伝達・筋肉の収縮運動・骨や歯の形成・血液凝固・細胞増殖・ホルモン分泌など
クロールイオン
水分量調節・浸透圧調節・胃酸分泌など

確かにどれも重要な役割を担っている事がよく分かりますが、熱中症対策に焦点を当てて見ると、やはり神経伝達と水分調整、それに浸透圧調整を担当するミネラルが大事だと言えるでしょう。

まず、自律神経が支障をきたせば、放熱や産熱の指令が全身に行き渡らないため、上昇した体温を下げられません。また、水分調節がうまく出来なければ、浸透圧の高低が生じ、「脱水症状」を引き起こします。そう、この「浸透圧」こそが、熱中症の典型的症状の一つである脱水状態と大きく関わっているのです。という事で、次は浸透圧についてお勉強しましょう。

(3)「浸透圧」を知る

熱中症の引き金となるのが「脱水症」。そして、その脱水症は「浸透圧」の調整が出来なくなる事によって発症します。そこで、ミネラル補給が重要だと言われる訳ですが、そもそも“浸透圧ってなんだ?”という方は少なくないでしょう。

人の水分はただの水ではありません

私たち人間の体は60%までが水分だと言われています。ただし、単なる水ではなく、「体液」という特殊な水で、そこには動力源である電気を通す電解物質が流れています。完全なるスペシャル水溶液です。

人の体液は大きく分けて2種類あり、細胞の生命維持に必要な代謝などの活動を担っているのが「細胞内液」、その細胞活動が円滑に行えるように環境を整えているのが「細胞外液」。その名の通り、細胞内液は細胞の内側を満たし、細胞外液は細胞の外側を満たしている訳ですが、その割合は7対3くらいで、大半が細胞内液です。

この2つの体液は、役割が異なりますから、性質も完全に異なります。細胞内液はカリウムイオンが主力ですが、細胞外液はナトリウムイオンが主力。細胞内液は研究開発や製造工程に勤しむ理系スタッフの集合体、細胞外液は、警備や建物の補修、あるいは資財の運搬などに携わる体育会系スタッフの集合体とでも言ったところでしょう。となると、やはり細胞内液の方が重要視されがちです。

しかし、細胞外液が不足すると、たちまち細胞増殖の資財となる栄養素の運搬や搬入が出来なくなり、細胞内液は作業をストップせざるを得なくなってしまいます。さらに、細胞内部で出た老廃物を回収し、体外へ排泄するのも細胞外液の仕事ですから、それも出来なくなるという事は、ますます内部の環境を悪化させてしまう事になるのです。そこで、常に細胞内液が円滑に作業するためには、良質な細胞外液を保っておく必要があります。そして、その良質な細胞外液を保つ事こそが、確実な熱中症対策だと言えるでしょう。

「浸透圧」とは?

細胞内液と細胞外液は、内容成分の異なる液体ですから、混合する訳にはいきません。そこで、「細胞膜」と呼ばれる膜でしっかり仕切り、分離しています。とは言え、細胞膜はレースのカーテンのような膜で、穴だらけ、隙間だらけ!
水や酸素のような粒子の細かい物質は容易に出入りできます。でも、実はその脆弱性が大事で、この出入りによって栄養素や老廃物のやり取りができる仕掛けになっているのです。

その一方で、赤血球のような大きな粒子は細胞膜を通過できません。そこで、赤血球が運搬する酸素を細胞が受け取る場合、細胞膜の通気口から搬入させます。それにより、赤血球の侵入を防げる訳です。また、細胞内で発生した二酸化炭素を血液中に排出する場合にも、同じ通気口を使い、難なく排出しています。

このように、液体や気体が仕切りとなる膜を通り抜け、互いの領域に入り混む事を「浸透」と呼び、その間の膜を「浸透膜」と呼んでいます。人の浸透膜は細胞膜が担っている訳です。

けれど、どちらか一方から多量に水分や酸素が流出するのも問題です。もし、細胞外液の水分だけが細胞内に浸透すれば、細胞内液は薄められます。しかし、かたや細胞外液は濃度が高まる訳で、いずれも良質な体液とは言えなくなってしまいます。勿論、逆に細胞内液の水分が細胞外に多量に流出しても同様で、生命活動に支障が出るでしょう。

ですが、幸いにも、こうした水溶液は、隣接し、浸透可能な状態にあると、互いの濃度を適度に保とうと協力し合う性質を持っています。浸透膜を介して水分のやり取りをしながら、自主的に濃度を調整しているのです。この力こそが「浸透圧」で、2つの溶液の濃度が同じ場合には浸透圧は発生しません。

しかし、片方の溶液の濃度が高まると、そこに浸透圧が掛かります。そして、濃度の低い方から高い方へと水の移動がある訳です。そうしてまた、互いの濃度が同じになった時、浸透圧は落ち着くというもので、これを繰り返しながら、人は細胞内液と細胞外液のバランスを保っているのです。

脱水のメカニズム

私たち人間の体液は、一定のミネラル濃度を保持したイオン水でなければなりません。そこで、水分が増え、濃度が薄くなると浸透圧は下がり、過分な水を排水します。反対に、水分が減って濃くなると浸透圧は上がり、水をつぎ足すシステムになっているのです。しかも、この濃度調整の過程において体温調節もできる仕組みになっていて、システムが狂わない限り、そう易々と熱中症になる事はないでしょう。

ただし、体内の貯水槽は細胞内と細胞外の2ヶ所しかなく、その2つのタンクの水をやり取りしながら浸透圧を保っています。という事は、多量の汗を掻き、細胞外液の水分が減少すると、そのイオン濃度が高まりますから、取り敢えず細胞内液から水を流し込んで濃度を下げる事に勤しむでしょう。細胞外液の浸透圧が高まっている状況です。

ならば、この少なくなった細胞内液の水を補充するためにはどうすればいいのでしょうか?
実際問題、人の体内には水源となる川や海があるわけでもなく、直接雨が降り込んでくれるわけでもありません。そうなると、しかたがないという事で、再び浸透圧の調整が行われます。今度は、細胞内液のイオン濃度が高まり、高浸透圧になりますから、細胞外液の水分が激減するといういたちごっこを繰り返すしかない訳です。

けれど、意識的に口から水を飲んだり、点滴という形で水分を取り込めれば、事態は大きく進展します。これこそが水分補給で、それを怠ると、たちまち「脱水状態」に陥るという訳です。そして、この『脱水』こそが熱中症の最たる症状なのです。

(4)「体液」の味

熱中症は、単に暑い場所にいる事で発症する訳ではありません。高温多湿により、必要以上の汗を掻くと体液が奪われ、様々な不具合をきたします。それが熱中症で、全ては脱水から始まると言って過言ではないでしょう。

脱水は命の水を失う事

私たち人間にとって、まさしく“命の水”とも言える体液。
カリウムイオンが主の細胞内液、ナトリウムが主の細胞外液ともに、実に多種多様の役割を担っています。中でも最も大事なのが、

  1. 必要な栄養素や酸素を運ぶ事
  2. 不要な老廃物を運び出す事
  3. 体温を調節する事
  4. 恒常性を維持する事

の4つだと言えるでしょう。因みに、恒常性とは「ホメオスタシス」とも呼ばれ、体内の環境を一定の状態に保ち続けようとする能力の事です。

ところが、我々は日々、体液を惜しげもなく流しています。尿はもちろん、汗も涙も、ついでに鼻水やよだれも体液なのにです。となると、大泣きしたり、多量に汗を掻くと体液が極端に減少する事も大いに考えられます。そう、この体液が極端に減少した状態、それこそが『脱水』で、それは水だけでなく、動力源となるカリウムやナトリウムまで失った状態なのです。つまり、脱水を引き起こすと水不足+イオン不足になるという事で、時にグッと涙をこらえる事も、汗を掻いた後には水分補給する事も必要になるという訳です。

ただし、水を多量に取り込み過ぎると、今度は体内で貯蔵しきれなくなる事態が発生します。そこで身体は、余分な水分をどんどん尿や汗で排出する策に打って出る訳です。水を飲み過ぎると汗になると言われるのも、尿意を催すのもそのため! 特に就寝前などは十分気を付けましょう。

生理食塩水を飲んで体液の味を知ろう

脱水は水ではなく、体液を失う事です。そんな体液を知るには、食塩水を飲むのが一番! 何故なら、汗や涙で放出される体液は細胞外液で、細胞外液は0.9%の塩分濃度を持つ食塩水だからです。ただし、この濃度の食塩水は、そんじゃそこいらの食塩水ではありません。生命の根源となる海の環境に習って作られた塩化ナトリウム電解水で、「生理食塩水」と呼ばれているちょっと特別な食塩水なのです。

とは言え、食塩水は食塩水ですから、簡単に作ることができます。ただ、1リットル(1000g)の水に9gの塩を溶かしたのでは塩分濃度0.9%の塩水にはなりません。溶かす塩の重量もしっかり計算してこそ、本当の生理食塩水になるのです。

という事で、9gの塩で生理食塩水を作るには、予め水の量を9g減らしておく必要があります。つまり、991gの水に9gの塩を溶かすと塩分濃度0.9%の生理食塩水が出来るという訳です。そして、それを飲めば、自分の体内を流れる命の水の味が分かるでしょう。

実際、この生理食塩水は、最も細胞への負担が少ない水という事で、水分欠乏時の点滴や動脈注射の中身として医療現場で用いられています。また、頑固な便秘を改善するための腸内洗浄「ソルトウォーターバッシング」にも使用されていて、コンタクトレンズの保存液や鼻うがい用の液も生理食塩水なのです。

ミネラルウォーターで熱中症予防はNG

生理食塩水を飲めば、体液がどのくらいしょっぱいか? そして、汗を掻いてそんな体液を放出しているのにも関わらず、補充するのはただの水では話にならないという事が実感出来るでしょう。となると、ミネラルウォーターで熱中症対策というのは、あまり利口な策とは言えそうにありません。

確かにミネラルウォーターは、その名の通り、ミネラル分を含む飲料水です。ただ、問題は、ミネラルウォーターを飲んで、甘いとかしょっぱいと感じる事があるかないかという事!! 恐らく、砂糖水のように甘くも、塩水のように辛くもないのが水の最大の特徴で、その感覚をぶち破るミネラルウォーターに出会った事のある人の方が少ないものと思われます。

実際、ミネラルウォーターというのは、地下水を原水とする市販の飲料水の事で、その「カルシウム塩」と「マグネシウム塩」の含有濃度によって、「軟水」・「硬水」・「非常な硬水」の3種類に分けられています。という事は、硬水以上ならまだ頼りがいもありそうなところなのですが、日本国内で産出され、市販されているものの大半は、ミネラル含有濃度0mg/Lから60mg/Lという軟水で、熱中症対策どころか、ミネラル補強そのものが難しいとされているのです。

そのため、水道水やミネラルウォーターだけをどんどん補充すると、体液濃度がますます下がり、悪質になっていく一方。そこで、どんどん尿や汗で排泄し、浸透圧の調整に勤しみますが、それでも追い付かないとなると、とにかく動力源のイオンだけは少しでも維持すべく、今度は逆に発汗を抑えます。すると、放熱が出来なくなり、体温は上昇の一途を辿る事になるでしょう。これが熱中症のメカニズムで、その一歩手前には必ず脱水症状が先行しているのです。

因みに、このように不足する体液の代わりに水を補給しすぎ、血中までナトリウム不足に陥った状態を『低ナトリウム血症(ていなとりうむけっしょう)』と呼び、立派な病気です。私たち人間の血液は細胞外液で作られているため、そのナトリウム濃度が下がると、血のナトリウム濃度も下がり、非常に危険だという訳です。そのため、低ナトリウム血症は「水中毒」などとも称され、絶対に避けなければなりません。

という事で、熱中症を予防する上では、細胞外液に極めて近い性質を持つナトリウムイオン電解水を補充する事こそが効果的!
そして、最も簡単に入手でき、手軽に飲めるイオンウォーターが「スポーツドリンク?」という訳なのですが・・・、実はスポーツドリンクなら何でも安心という訳ではなさそうです。そこで次は、そもそもスポーツドリンクとは何者なのかを見てみましょう。

(5)「スポーツドリンク」を知る

地球温暖化の影響により、今や熱中症対策をなくしては日本の夏を乗り切る事はできません。
そして、その熱中症対策として必須なのが水分補給です。ただし、暑いから、喉が渇いたからと言って、水をがぶがぶ飲めば元気に夏を乗り切れるのかと言うと、これがとんでもない話!
ただ水を飲むだけでは逆に熱中症の引き金にもなりかねないので要注意です。熱中症対策のポイント、それは水分補給というよりはミネラル補給、強いてはイオン補給なのです。

水分補給NGは危険

私たちが子供の頃は、“夏と言えば麦茶!”でした。でも、今は違います。“夏と言えばスポーツドリンク!”という事で、なんでも、スポーツドリンクこそが理想の熱中症対策飲料なのだとか・・・!? とは言え、熱中症対策としてスポーツドリンクを活用するのであれば、まずはスポーツドリンクを正しく知る事が大事でしょう。

そもそもスポーツドリンクはその名の通り、スポーツをする時の水分補給飲料として開発されました。時は1960年代半ば、第二次世界大戦の傷跡も癒え、いよいよ世界がスポーツを通じた平和の確立へと歩み始めた頃です。日本でも夢のオリンピック開催が決まり、まさにスポ根時代を迎えていましたが、勝利国であるアメリカのスポーツに対する情熱は、そんな日本をはるかに上回るもので、取り分け、国技であるアメリカンフットボールへの入れ込みようは中途半端ではなかったと言います。アメフト部を持つ大学ではどこも、厳しい練習こそが強い選手を生み、強いチームを作ると信じられ、ただひたすら負荷を追求するプログラムばかりが実践されていました。そして、その一つが、練習中の水分補給を厳禁とする根性論だった訳です。

けれど、アメフトの選手が装着する防具の総重量は軽くても6キロ、ポジションや体格によっては8キロを超える事もあります。特にエプロンのように軽々しく身に付けているように見えるショルダーなどは、大きなものになると3キロに達し、赤ん坊1人を抱きかかえて走り回っているようなもの。その重さと内側の身体の熱さは中途半端ではありません。練習が佳境に達する頃には、ペットボトル1本分を大きく上回る2.5リットル以上の汗を掻いている選手が圧倒的多数です。にも関わらず、“練習中には水を飲むな!”というコーチや監督の指示は、まさに殺人行為。事実、当時は年間20名前後のアメフト選手が、脱水症状や熱中症で命を落としていたと言います。そんな折、スポーツ科学や生理学の分野で、運動中の水分補給の必要性が徐々に明らかになり、スポーツドリンクの開発へと至ったのです。

水分補給OKも危険

日本でも昔はよく、水を飲み過ぎると汗が増えるだけで逆効果だと言われたものです。しかし、これは決して誤った見解ではありません。単純に水だけを摂取すると、体液の浸透圧が低下し、動力源であるイオン濃度が薄くなります。そこで、それを調節すべく、発汗や排尿で余分な水分を排泄しようとするのです。結果、水中毒となり、脱水症状は悪化します。

実際、練習中に水分補給をしないために倒れるアメフト選手が続出する一方、自由に水を飲む事が許されていたダムなどの建設現場でもまた、熱中症で倒れる作業員が相次いでいました。そこで研究したところ、汗で奪われるのはイオンを含んだ体液なのにも関わらず、補充するのはただの水では、益々イオン濃度が下がり、危険だという事が明らかになったのです。

ならばと考えた医師たちは、一定量の水を飲むごとに、一定量の塩も摂取する事を推奨しました。塩は塩化ナトリウムで、水に溶けるとナトリウムイオンとクロールイオンという2つの主要イオンを発生します。これにより、体液の濃度が上昇し、脱水状態は免れるのです。

そして、これを踏まえた上で、フロリダ大学病因の泌尿器科では、自らの大学のアメフト部「ゲーターズ」の選手たちから様々なデータを収集し、ついに世界初のスポーツドリンク「ゲータレード」を産み出しました。

スポーツドリンクは必ずしも安全なものばかりではありません

今やスポーツドリンクは数多くのシーンで素晴らしい効果効能を発揮し、私たち人間の命を救ってくれる事も多々あります。そのため、これで熱中症から命を守れると思いがちですが、実は単なるジュースにすぎないものも少なくありません。さらに、単に飲んだだけで危篤状態に陥るような重篤な事態を引き起こすものもあって、十分吟味する事が大事なのです。

というのも、今時のスポーツドリンクは熱中症を予防するだけにとどまらず、運動時の疲労回復効果も持ち合わせているものが大半です。そうなると、ナトリウムだけでなく、糖質も含有する方が効果倍増という事で、なんと、炭酸飲料よりも糖度の高いスポーツドリンクも多数存在するのです。そのため、糖質燃焼を伴わない場面でスポーツドリンクを多量摂取すると、「急性糖尿病」を発症するリスクを秘めています

実際問題、ナトリウムは塩ですから、理想のスポーツドリンクはただの塩水という事になり、どう考えても清涼飲料としての価値と魅力に欠けます。そこで、味や口当たりを良くするため、十分な糖質を含有するか、もしくは、ナトリウムの量を減らすか、二つに一つしかないというのが現実でしょう。当然、前者は先のような糖尿病のリスクを背負っています。ならば、後者の方が安全性が高いのかと言えば、これがとんでもない話で、イオンとなるナトリウムが不足しているのです。体液濃度を調整する効果に欠ける事は言うまでもありません。加えて、糖質が低いと、運動時の疲労回復効果が衰える事にもなります。

しかし、これだけ多種多様のスポーツドリンクが出回っていれば、良質なものもあれば悪質なものもある。ここまでは多くの方が納得されているものと思われますし、皆さん、それなりにチョイスしておられる事でしょう。ですが、どんなに良質なものでも、突如として悪質な飲料になるのがスポーツドリンクの恐ろしいところ。その真の善し悪しは、私たち消費者の飲み方が決めると言っても過言ではありません。つまり、飲み方を間違えば、毒薬にもなりかねないという事です。

少なくともスポーツドリンクは、スポーツや肉体労働などで激しい疲労や糖質燃焼を伴う時に飲む飲料という認識を持つのが絶対条件。単に暑い時に喉の渇きを抑えるのに飲むものではないという事なのです。ならば、糖質燃焼を伴わない場面では、どのような飲料で熱中症対策をするのが効果的なのでしょうか?
その答えは、次章のお楽しみです。

(6)麦茶で熱中症対策は出来るのか?

日本のスポーツドリンクの歴史は思いのほか古く、1965年にアメリカで開発された「ゲータレード」を、1970年に大正製薬が輸入販売したところから始まります。しかし、それほど知名度も上がらず、需要も殆どありませんでした。実際、“半世紀近くも昔の日本にスポーツドリンクが存在していた事すらビックリ!”とおっしゃる方は少なくないでしょう。因みに、国産初のスポーツドリンクとなる大塚製薬の「ポカリスエット」が出たのは1980年の事で、その後、徐々に支持を集め、知名度を上げていったものと思われます。ではでは、それまで日本人はどうやって暑い夏を乗り切っていたのでしょうか?

麦茶はスゴい!

長年日本ではずっと、夏と言えば「麦茶」でした。
この麦茶で身体を冷やし、熱中症対策をしていたのです。確かに麦茶は夏に収穫期を迎える大麦で作られる飲料。となると、間違いなく夏が旬の食材という事で、「夏きゅうりの脂肪燃焼効果」「夏バテ予防には梅干しよりグレープフルーツ」の記事でもご紹介したように、夏に嬉しい効果効能をもたらせてくれるはずです。

事実、大手飲料メーカーと医療機関がタッグを組んで研究した結果、麦茶は胸部から腹部に掛けての体温を1度以上下げる事が明らかになりました。それに対し、ミネラルウォーターはと言うと、なんと、体温を上昇させてしまったと言うからビックリです。それも、麦茶が最高1.7度の体温低下に成功したのにも関わらず、ミネラルウオーターは、1.6度の体温上昇記録を出してしまったと言うではありませんか!!
つまり、ミネラルウオーターで熱中症対策は難しいという事は、科学的にも実証されているのです。

では、何故このような差が出たのかと考えた時、一つ気になるのが「ピラジン」の存在。このピラジンは、上記のキュウリにも含まれる香草成分ですが、血液凝固を防ぐ作用を持っています。そのお陰で、血液がさらさらになり、代謝が高まることで手足の指先の体温は保持したまま、胸とおなかの体温だけを下げることが可能になるものと思われます。しかも、血流が良くなるという事は、表皮からの放熱もできるという事で、身体を無理に冷やすこともなく程良い体温調整ができるのではないでしょうか。

麦茶で隠れ脱水を防げ!

身体の末端を冷やさずに中心部の体温だけを下げるというすご技を持つ麦茶は、ノンカフェインでもあり、老若男女を問わず安心して熱中症対策ができるスペシャル飲料であると言えるでしょう。そこで、夏期はコーヒーや紅茶、あるいは水や番茶と言った日常の水分補給を麦茶に置き換える事で、隠れ脱水を防止し、かなりの高確率で熱中症を予防できそうです。

何しろ麦茶はスポーツドリンクとは違い、少々飲み過ぎても糖尿病になる心配がありません。実際、スポーツドリンクには、コップ1杯あたり約10gもの糖質が含まれていて、そのエネルギー量は40キロカロリーにも及びますが、麦茶はと言うと、糖質が僅か0.6gほどで、たったの2キロカロリー!! ダントツヘルシーなのです。

因みに、「隠れ脱水」というのは、すでに体内では渇水が始まっているのに、その症状が出ない状態。これまでに学んだように、熱中症の前には必ず脱水がある訳ですから、そのさらに前には隠れ脱水を発症している事になります。なんと、この隠れ脱水が始まってから熱中症で倒れるまでには数日の猶予がある人も少なくなく、早期に対処できていれば大事に至らないケースが圧倒的多数なのです。

そこで、少しでも汗を掻いたり涙を流して体液を放出した場合には、同量の水分を補給する事が必要不可欠となり、そのこまめな水分補給に最も適した飲料、それが低カロリー&ノンカフェインで、誰もが美味しく飲める麦茶だという訳です。

麦茶の弱点

ただし、麦茶で確実に熱中症予防を成功させるには、麦茶の弱点を補強してやる必要があります。麦茶の弱点とはズバリ、ミネラル不足です。

ミネラル補給が大事と言われる熱中症対策において、ミネラル不足では話にならないと叱られそうですが、これは紛れもない事実なのでしかたがありません。何しろ、多くのスポーツドリンクは、コップ1杯あたり約60mgものナトリウムを含有していて、さらにカリウムも約50mg、カルシウムは約15mgです。それに対して麦茶は、ナトリウムが約1mg、カリウムが約12mg、カルシウムが約4mg程度なのですから、とてもじゃないが太刀打ちできそうにないのです。

とはいえ、このミネラルの含有量、それも、ナトリウムイオンの原料となる塩分の含有量の少なさだけが麦茶の唯一の弱点であるとも言えるでしょう。そうなると、その難点を克服すべく、塩をちょこっと足してやるだけで、十分スポーツドリンクに匹敵する価値が出るものと思われます。

実はこの、「麦茶に塩」という作戦、日本では昔から導入されていました。そう言えば・・・と思い出された方もいらっしゃるでしょうし、今でも実践されておられるお宅は少なくないはず! そう、これぞまさしく、おばあちゃんの生活の知恵が編み出した実に効果的な熱中症対策だったのです。

という事で、激しい肉体疲労や糖質燃焼を伴わないような場所や場面での水分補給は、高カロリーのスポーツドリンクではなく、低カロリーの麦茶の方が相応しいでしょう。特に、1リットルあたり2gの塩を入れた塩麦茶が理想で、元々含有されている塩分量を考えると、小さじ3分の1程度足せばバッチリ!! それほどしょっぱくはならず、塩分の過剰摂取の心配もないレベルです。にも関わらず、隠れ脱水を阻止し、熱中症予防ができるのですから、やっぱり“麦茶はスゴい!”と言えそうですね。

(7)「経口補水液」を知る

熱中症対策と言えば二昔前までは麦茶、一昔前はスポーツドリンクが人気でしたが、今は新たに『経口補水液(けいこうほすいえき)』というものが注目を集めています。この経口補水液、従来のスポーツドリンクとどこがどう違うのでしょうか?

スポーツドリンクと経口補水液の違い

ここに同じ大塚製薬が出す「ポカリスエット」と「OS-1」のコップ1杯(約200g)あたりの成分比較があります。前者はスポーツドリンク、後者は経口補水液です。

/ ポカリスエット OS-1
エネルギー 50kcal 20kcal
炭水化物 12.4g 5g
ナトリウム 100mg 230mg
カリウム 40mg 156mg
カルシウム 4mg
マグネシウム 1.2mg 4.8mg
リン 12.4mg
ブドウ糖 3.6g
塩素 354mg

これまでスポーツドリンクと経口補水液の違いは、糖分の含有量とミネラルの含有量にある事は多々取り上げられて来ましたが、こうして見ると、やはり全く異なる飲料である事がよく分かります。しかも、単に経口補水液は、ミネラルが多くて糖分が少ないだけの飲料ではなさそうです。

経口補水液の糖質に注目!

ここで一つ注目したいのが、両者の糖質含有量です。いずれも炭水化物は含んでいますが、経口補水液はそれプラス、ブドウ糖も含有しています。しかも、炭水化物が極端に少なく、その不足分をブドウ糖で補っているのです。この炭水化物ではなくブドウ糖で対処するというのがミソで、経口補水液が熱中症の改善に効果を発揮する大きな要因になっているものと思われます。

そもそも汗で失うのは体液で、その体液に限りなく近いと言われるスポーツドリンクや経口補水液ですが、以前に学んだように、細胞外液は食塩水なのですから、糖質は無用のはずなのです。早い話、生理食塩水や塩麦茶で賄えるとみていいでしょう。

ただし、口から取り込まれた飲食物が、すぐさま骨となり、肉となり、皮となる訳ではありません。消化器官での分解と吸収を経た後に、細胞となって組織を形成するのです。水分も同様に、一度消化器官に運び込まれ、そこで分解され、小腸から吸収されて体液が作られます。そうなると、一度に多量の体液を失った場合、その過程をいち早くこなし、細胞外液を精製する事が必要不可欠になる訳ですが、その手助けをしてくれるのが糖質なのです。

実際、適度な糖分を含んだ水は小腸で急速に吸収され、即座に細胞外液として使用されます。というのも、小腸で待ち構える水や栄養素の配送係「SGLT1」は、ナトリウムとブドウ糖が大好き! この2つが送り込まれて来ると、取り敢えず速効積み込んで配達に出る習性を持っているのです。そこで、塩と糖を適度に混ぜ込んだ水を送り込んでやると、待ってましたとばかりに吸収し、短時間に多量の体液を補充できる訳です。

ただ、ここで忘れてならないのが、口から飲んだ水は、小腸に辿り着くまでに食道と胃という2ヶ所のトンネルをくぐるという事。そのため、糖質濃度が高く、粘り気が強いと、小腸への到着時間が大幅に遅れてしまう可能性が危惧されます。そこで、最も短時間で小腸に到着し、吸収される糖度の範囲を「至適水分補給域(してきすいぶんほきゅういき)」と呼び、2.5%から8%とされているのです。

となると、先の2つの飲料はともにその範囲を十分満たしている事になるのですが、スポーツドリンクの糖分は炭水化物のみなのに対し、経口補水液の糖分はブドウ糖が多量に含まれています。実はこの差が思いのほか大きく、炭水化物はブドウ糖に食物繊維が付着した物質であるため、純粋な糖にするには分解作業が必要になるのです。そうなると、せっかく糖質を適量含む水を送り込んでも、価値が下がってしまう事になるでしょう。その点、初めから3分の1以上がブドウ糖の経口補水液は、その分解時間も大幅に短縮でき、迅速な体液補充が可能になるという訳です。

経口補水液とは?

最も必要な量の塩分と、最もそれを速く吸収できる量の糖分を溶かした電解水、それが経口補水液です。しかも、一般の清涼飲料にはほとんど含まれないリンや塩素と言った主要ミネラルもしっかりと含有していて、もはや薬の域に達している感じですね。

それもそのはずで、そもそも「経口補水液」は、その名の通り、口から体液を補うための水として考え出されました。点滴や注射と言った医療器具を必要とする措置が思うように出来なかった発展途上国で、感染症などの治療のために用いられていたのです。

そのため、生理食塩水よりは飲みやすいものの、スポーツドリンクに比べれば全然美味しくありませんが、それは当然。むしろ、薬と捉える方が賢明なのです。よって、水を飲むというのではなく、服用するという事で、それなりのルールもあれこれあります。少なくとも、飲みにくいからと言って、水で薄めたり、他の飲料と混ぜ合わせるのは絶対NG!! それでは、いち早い吸収力を考え尽くした組成バランスが崩れ、何の効き目も持たないただのジュースにもなりかねません。

そして、何より把握しておくべき事は、これを飲んだからと言って、確実に熱中症予防ができる訳ではないという事です。それどころか、500mlの経口補水液1本で、梅干し10個分以上の塩分が含まれており、逆に浸透圧を高める可能性もあります。従って、健康体の時は勿論、高血圧症や腎臓疾患・糖尿病と言った持病をお持ちの方も十分な注意が必要です。
やはり経口保水療法の道具として、軽度から中等度の脱水状態を発症している時にのみ飲用するのが賢明でしょう。さらに、飲み過ぎも危険で、軽度の脱水症なら500ml程度、中度の脱水症で1000mlまでを目安とするのが望ましいとされています。

という事で、「麦茶」・「スポーツドリンク」・「経口補水液」という3つの飲料は、それぞれ異なる性質と役割を持っていると認識し、巧みに飲み分けをする事が熱中症対策のポイントになるものと思われます。そこで、いよいよ次に、その辺りを検討して行きましょう。

(8)脱水症レベルを知る

熱中症になれば脱水状態になると思われておられる方も多いようですが、実は真逆! 脱水が熱中症を引き起こすのです。
その証拠に、脱水が進行するに連れ、徐々に熱中症の典型的症状が現れます。そこで、そのレベルを知り、早期に適切な水分補給をする事で、大事に至るのを避ける事こそが、最良の熱中症対策だと言えるでしょう。

レベル1:「隠れ脱水」

痩せたい痩せたいと思っている人にとっては、体重が1gでも減れば嬉しいもの! サウナや温泉でたっぷりの汗を掻いた後、体重計に乗って、思わず“やった〜!”と叫びそうになった経験のある方は案外多いのではないでしょうか? でも、落ち着いて考えてみて下さい。私たち人間は水分の塊のような生き物です。となると、汗を掻く事は、その水分が減る事ですから、体重が減少するのは当たり前! 必ずしも痩せた訳ではありません。

それどころか、1週間以内に1%から3%の体重が減少すれば、脱水状態にある事を意味しているかも知れないのです。特に夏場は、これぞまさしく「隠れ脱水症」で、熱中症のレベル1。こまめな水分補給とバランスの取れた食事を心がけ、細胞外液と細胞内液の浸透圧を維持するように努めるのが大事です。

確かに一生懸命ダイエットに励んでいる人なら、ようやく努力の成果が出始めたかのように見えますが、体重の3%となると、60キロの人にとっては1.8キロ。運動や食事療法による体重変動は週単位で進むため、ここまで急激に下がる事はめったにありません。徐々に徐々に減少し、気が付けば2キロ痩せていたというのがオーソドックスなパターンです。それに対し、水分喪失は日単位で進行するため、ほんの数日で一気に減量してしまうのです。風邪やインフルエンザで嘔吐や下痢を繰り返すと痩せるのは、その最たる例だと言えるでしょう。

レベル1の「隠れ脱水」においても、喉の渇きや尿量の減少など、それなりの兆候が出ます。さらに、消化液や血液となる細胞外液が少々不足気味という事で、食欲不振や倦怠感などが表れる事も珍しくありませんが、困った事に、こうした症状は、多くの人が夏バテと勘違いしてしまいがちなのです。おまけに、食欲が衰えたから体重が減ったという見解も成り立ち、なかなか脱水にまで発想が及ばないのが一般的だろうと思われます。

しかし、ここで対処できれば、熱中症は阻止できます。しかも、この時点での方法は至って簡単で、こまめに水分補給するだけでいいのです。少しでも汗を掻いたら一口飲む。ほんの少し喉が渇いても一口飲む。その繰り返しを怠らない事こそが、最良の熱中症対策です。

とは言え、水道水やミネラルウォーターを飲み過ぎると浸透圧が下がり、塩分の多い経口補水液を多量摂取すると浸透圧は上がります。さらに、糖分の多い清涼飲料では急性糖尿病を発生する恐れがあるという事で、浸透圧を維持でき、且つ、糖分の過剰摂取を防げる塩麦茶が最も効果的だと言えそうです。

そして、スポーツや激しい発汗を伴う労働をする場合にはスポーツドリンクがお薦め! ただし、塩麦茶やスポーツドリンクで熱中症対策ができるのは、この隠れ脱水レベルまでです。努力むなしく脱水症を発症してしまった場合には、出来る限り軽いうちに経口補水液で体液をいち早く確実に補充する事が重要なのです。

レベル2:「等張性脱水」

1週間以内に体重が3%以上減ったら、それはもはや脱水状態です。とは言え、この時点ではまだ、細胞外液が放出されている段階ですから、汗はほぼ生理食塩水に近い塩分を含んでいます。つまり、水分とイオンがバランスよく失われている状態で、このような脱水を『等張性脱水(とうちょうせいだっすい)』、あるいは、「混合性脱水」と呼びます。

通常、急性の等張性脱水は、激しい下痢や嘔吐を繰り返した時、もしくは出血多量の時に発症するもので、経口保水療法は、その措置の一つとして普及しました。しかし、もともと隠れ脱水であったのにも関わらず、短時間に大量の汗を掻けば、たちまち細胞外液は不足し、高い確率で等張性脱水を発症します。そこで、病気でなくても速やかに限りなく体液に近い経口補水液を飲み、細胞外液の量を正常範囲に戻す事が必要不可欠になるのです。

ちなみに、等張性脱水の段階では浸透圧に異常がないため、表皮が真っ赤になったり、真っ青になるなど、顔色が大きく変わる事はありません。ですが、渇水状態にあることは事実で、激しく喉が渇き、口の中が乾燥するのが特徴です。また、軽い頭痛やめまい、息苦しさなどを感じる事もあり、熱中症のシグナルは十分でます。そこで、ただちに経口補水液を摂取し、涼しい場所で安静にする事により、回復できるのです。

レベル3:「低張性脱水」

等張性脱水は軽度の脱水症という事で、その場で適切な処置をする事により、大事にいたることを防げますが、この段階で水道水やミネラルウォーターを多量摂取すると、細胞外液の濃度は急激に下がります。結果、浸透圧が下がるという事で、新たな脱水症状『低張性脱水(ていちょうせいだっすい)』を引き起こすため、ただの水は厳禁と言っていいでしょう。低張性脱水はナトリウムが不足した状態という事で、「ナトリウム欠乏性脱水」とも呼ばれ、熱中症レベルは3。中等度で、後に低ナトリウム血症を招きます。

にも関わらず、水分をたっぷり取れば、ナトリウム濃度が薄い状態ということもあり、喉の渇きをほとんど感じないのが大きな特徴。そのため、状態が改善したかのように勘違いされる事が少なくありません。けれど、細胞外液は浸透圧を調整すべく、細胞内に多量の水分を排出するため、血液量が減少します。すると、血圧が下がり、循環器不全を起こす確率が高まるということで非常に危険です。

実際、表皮が青白くなり、手足のけいれんや頻脈など、これは放置しておけないという症状が出る段階で、さすがに自他共に熱中症である事を認めざるを得なくなります。経口補水液で応急措置はできますが、一刻も早く医療機関を受診する事が必要不可欠です。

レベル4:「高張性脱水」

低張性脱水は、もはや十分危篤状態にあると捉えるべきでしょう。もし、そのままのんびり様子をうかがっていると、今度は細胞外液のナトリウム濃度が高まり、『高張性脱水(こうちょうせいだっすい)』を引き起こします。

高張性脱水は、「水欠乏症脱水」とも呼ばれ、最終的に辿り着く重度の熱中症です。ところが、浸透圧により細胞内液の水分が細胞外液に移動する事で、取り敢えず血液量は保持されます。そのため、低張性脱水時には青白かった表皮が赤みを取り戻し、様態が改善したように見えます。

また、隠れ脱水や等張性脱水の段階で何の対処もせず、急激に大量の汗を掻いた場合、いきなりこの高張性脱水を発症する事があり、激しく喉が渇くところから、これが熱中症の初期段階だと勘違いされる事も少なくありません。けれど、これは完全にレベル4の状態で、本人は幻覚を見ている事もしばしば。そして、程なく意識障害が見られます。

という事で、経口補水液を持ってしても、確実に対処できるのはレベル2の等張性脱水まで。ましてや、麦茶やスポーツ飲料が役立つのは、レベル1の隠れ脱水までです。けれど、だからこそ、その段階で麦茶とスポーツドリンクを上手に使い、しっかりと脱水を事前回避することが大切なのです。

いかがでしたか?

身体のメカニズムと飲料の特性が分かれば、それを上手に活用した熱中症対策ができます。それを知らずに取り敢えず水を飲む、スポーツドリンクを飲む、経口補水液を飲むというのが最も危険だという事がお分かり頂けたのではないでしょうか?

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