α-リポ酸は以前はビタミンの一つと考えられていました。しかし、α‐リポ酸が肝臓で合成されるために、必ずしも食品から摂取する必要がない物質であることが分かったため、ビタミンからは除外してビタミン様物質として認識されています。別名はチオクト酸です。
細胞内には50から200程度のミトコンドリアが存在し、心臓を動かしたり呼吸をしたりする生命活動そのものにかかわるエネルギーを作り出しています。ミトコンドリアの働きが円滑に行われなければ、体の働きがうまくいきません。α‐リポ酸はミトコンドリア内に存在してその働きをサポートしています。
α‐リポ酸は水にも油にも溶ける性質があるので体中の細胞に入ることができます。細胞膜の内外、脳内関門を通過できる抗酸化物質はα‐リポ酸だけです。
日本では医薬品にのみ配合可能な成分でしたが、2004年からサプリメントや食品にも配合可能になりました。
α‐リポ酸の効能
α‐リポ酸は、体の細胞のミトコンドリアに存在してミトコンドリアのエネルギー合成のサポートをします。この時、特に糖質をエネルギー化することに深くかかわるため、α‐リポ酸が活発に働くと糖質が迅速にエネルギー化されるので体内に糖質がたまりにくくなります。α‐リポ酸が肥満防止やダイエットに効果があるといわれるゆえんです。
また、糖を迅速にエネルギー化することで、体内にたまった糖がたんぱく質を糖化（破壊）するのを防止します。肌や筋肉の劣化を防ぐのです。
α‐リポ酸はそれ自体に強い抗酸化作用があります。細胞膜の内外、脳の細胞にまで入り込み抗酸化作用を発揮します。抗酸化作用が強い成分にはビタミンC、ビタミンE、コエンザイムQ10、グルタチオンなどがありますが、これらの成分が抗酸化の役割りを果たして無力化した時にα‐リポ酸はこれらの成分を再生させるのです。α‐リポ酸自体も抗酸化力が低下した場合に他のαリポ酸によって再生されます。
その他、α‐リポ酸には薬や有毒動物の毒を解毒する作用があります。
そのため、α‐リポ酸の効能として、老化防止、肝機能強化、疲労回復など過労や疲労、暴飲暴食、生活の悪習慣などによる体全体の劣化緩和に効果があります。生活習慣病予防や抗がん効果につながる作用です。
α‐リポ酸の力を利用して、医薬品が開発されています。主に「激しい肉体疲労」「亜急性壊死性脳脊髄炎」「抗生剤の中毒による難聴」「職業性難聴」などの治療薬に使用されています。
α‐リポ酸欠乏症
α‐リポ酸は、体内のあらゆる細胞内でエネルギー合成に関与しています。また非常に強い抗酸化作用を持っています。そのため、α‐リポ酸が欠乏すると、疲れやすい、体力がない、老けている、病気になりやすい、などの症状が現れます。
α‐リポ酸は体内で合成される成分ですが、加齢とともに合成能力が減退してしまいます。それを補うためには食品で補うことが大切です。
α‐リポ酸の副作用
α‐リポ酸は、医薬品として利用されるばかりではなく、サプリメントや一般食品にも使用されるようになりました。医薬品として服用した場合に現れる副作用としては、食欲不振、下痢、嘔吐などです。
サプリメントとして摂取した場合には、インスリン自己免疫症候群（低血糖発作）を起こす場合があります。HLA型（HLA-DRB1*0406）の遺伝子を持つ人がα‐リポ酸を摂取すると低血糖発作を起こす場合があるのです。この遺伝子は、日本人には比較的多く6〜7％程度の人がこの型の遺伝子を持つといわれています。
低血糖発作では、手足が震えたり冷汗、顔面蒼白などの症状が出ます。また、妊婦や授乳婦に関する影響は確認できていません。
α‐リポ酸を多く多く含む食品
レバー、ほうれんそう、じゃがいも、にんじん、トマト、ブロッコリー、ビール酵母 などにα‐リポ酸が含まれています。
最後に
α‐リポ酸の抗酸化作用は非常に素晴らしいものがあり、しかもビタミンC、ビタミンE、コエンザイムQ10などを再生するとあれば、ぜひにもサプリメントを利用したくなってしまいますが、自分の体質を良く見極めることが大切です。
もともと医薬品成分だったということは、顕著な効果をあげるということであり、それは副作用もありえるということです。医薬品としての但し書きでは、効果が認められない場合に漫然と継続的に服用してはいけないとなっています。
